日本水機工株式会社は、高速道路の工事をはじめとした公共工事を中心に、超高速水流を工具とするウォータージェット工法で、構造物の補修・補強工事、解体工事を専門に手がける会社だ。
この工法は従来の工法に比べて、工事単価が高いために普及が遅れたが、低振動・低騒音で周辺環境や作業員の健康にもやさしいこと、水を使用することで排水処理が容易で環境に優しいこと、さらには建物の健全部分にダメージを与えずに工事ができることから、費用対効果の高い維持管理方法として認識され、公共工事などで急速にニーズを高めていた。
そうした需要の変化に敏感に反応して、ウォータージェット工事主体の事業を中核にした同社は、2018年の創業当初から順調に業績を伸ばしている。
ウォータージェット工法を用いて補修工事や解体工事を専門に行っている会社が、創業わずか4年で急成長を遂げた。
日本水機工株式会社
代表取締役社長
綾城光男
新会社を好発進させたウォータージェット工法
綾城社長:「ウォータージェット工法を用いた工事の発注が出始めたのは、いまから6~7年ほど前のことでした。当時私は、土木建築の会社に籍を置いていましたが、この工法のもつポテンシャルの大きさを知り、道路工事などで主流になると予想しました」
その予想どおりに、ウォータージェット工法は高速道路の工事で指定工法となり、綾城社長の先見性の正しさを証明した。
綾城社長:「ウォータージェット工法の需要は増すばかりで、その需要に応えるには、この工法に特化した事業体を起こす必要があると考えた私は、在籍していた会社を辞し、新会社である日本水機工を立ち上げたのです。幸いにも協力していただけるお客様や、下請け企業、さらにはこれまでに知り合った多くの関係者の協力を得ることができ、新会社はスタートから全力で走り出すことができました」
この工法と同様に同社の強みになってきているのが、社員の『人間力』の高まりである。
綾城社長:「相手を思いやり良好な人間関係を創ることのできる力、気配りや気遣いでクライアントさんに付加価値を提供できる力。私利私欲でなく利他の心で誰かのために進んで動ける力、そういった気質を備えた社員を育てようとしたことで、現場での気配りや思いやりが今まで以上に発揮されるようになっています。こうした人間力こそ、見積書には載りませんが、お客様に付加価値を感じていただける要素になると思います」
地域・社会貢献と社員目線の労働環境の改善
日本水機工が提供している子ども食堂「みずいろ食堂」では、この日、朝日大学の法学部の学生が非行・犯罪予防の観点から、ゲームや創作活動などを通して、子どもたちが巻き込まれそうな情報社会の落とし穴への理解や、社会のルールなどの学びの場を提供した。また、ハロウィンお菓子入れの工作の後、参加者全員にカレーライスがふるまわれた。
綾城社長:「私はいままで多くの方に支えられ、ここまでやって来られました。そうした皆さまからいただいた恩義を、私は地域にお返ししようと思うのです。地元に根付き、親しんでいただける企業になれたらと考えています」
そのためにまず実施したのが、付近の道路の草取りや掃除など。奉仕活動を続け、地域の一員として受け入れられるように努めた。
綾城社長:「コロナ禍で交流の機会を失った子どもたちのために『子ども食堂』を毎月開催しています。地元・瑞穂市の社会福祉協議会や、朝日大学法学部の学生のみなさんの力を借りて、集まった子どもたちの学習支援を行いながら、食事を提供しています。また、近隣企業9社でNPO法人を立ち上げ、子どもたちの通学路の安全確保のための活動をはじめたり、出産などで第一線から離れた女性の社会復帰の助けとして、『子育てママのCAD入門講座』といった雇用促進に繋がる学びの場も提供させていただいています」
社会貢献と同様に社内の労働環境の改善にも積極的に取り組んでいる。例えば、育児短時間勤務や会社独自の有給扱いの子育て支援休暇も制度化している。また、キッズスペースを設け子連れ勤務を可能にするなど、子育て支援が手厚い。入社時から特別休暇が10日間も付与されるなど充実した時短・休暇制度が整えられている。
働くことの価値観のズレに気付かされ制度を見直す
興味深いのは、福利厚生関係の諸制度は女性社員が素案を作り、社長は途中で一切口出しをしないことだ。これには理由があった。
綾城社長:「私の若い頃は、とにかくお金を稼ぐために働いていましたが、今の若い世代はお金よりも休日を重視し、ワーク・ライフ・バランスの取れた働き方を望んでいることに気付かされました。そうした若い世代の要望に応えられるような、働きやすく、生きがいを持てる職場作りをしようと考え、職場環境の改善に適役であろう女性社員に諸制度を任せたのです」
職場環境の改善後は、離職率が劇的に減った。きつかった社員の顔つきが柔和で明るくなり、気配りもできるようになったという。
綾城社長:「社員の稼働が減るので売上げが落ちると思いがちですが、メリハリのある働き方は生産効率を高め、貴重な人材も定着してくれる。そして働きやすい労働環境はなんといっても、他人を思いやる気持ちや気配りができる余裕をつくるなど、思いやり、気配りを高める効果が大きいのです」
社員の自己啓発やスキルアップを図るために資格取得支援全額補助制度や社内表彰制度も行っている。
こうした取り組みが認められ、同社は働き方改善で優良な取り組みを行った企業として「岐阜県ワーク・ライフ・バランス推進エクセレント企業」として認定された。
綾城社長:「工事の技術を売る前に、まず自分を売れ!」と社員に繰り返し呼びかける綾城社長。見積りに出てこない付加価値をお客様に提供するために、常に人間力を磨いているのが、日本水機工という会社だ。