学校法人明泉学園は、虎ノ門タイピスト学校を前身とし、女子教育の重要性と、将来の日本を担う子ども達に愛情を持って接することのできる保育者の育成を目的として、1961年に創立された鶴川高等学校に始まる。その後、1968年に鶴川女子短期大学を開設し、現在は附属幼稚園と2つの保育園を擁している。
少子化で私学の経営環境が厳しい中、次々と改革を進めてきた同学園は、2017年に幼児教育学科を「国際こども教育学科」にし、2019年には短大校舎改築を皮切りに、翌年には校名を「フェリシアこども短期大学」へと変更し共学化。さらに鶴川幼稚園を「認定こども園フェリシア幼稚園フェリシアこども短期大学附属」に変更した。
こうした改革の中、2021年8月に理事長に就任した百瀬義貴氏は、就任の半年後には、校長・副校長・教頭に女性教員を抜擢し、2023年度には高校も『フェリシア高等学校』に校名変更する改革に着手した。
国際化に対応できる保育者を育てる教育環境に学園全体を底上げ
教職員が一体になり学生と保護者へ教育の付加価値を提供し “選ばれる学校に”
学校法人 明泉学園
理事長
百瀬義貴
百瀬理事長:「校名の由来は学生達が誇りを持てる学校にしたいと、『幸福』という花言葉を持つ『フェリシア』としました。制服も一新する予定です。本学の建学の精神は、『愛の教育』。信望愛忍を校訓に、生徒一人ひとりが自分と他者を大切にする人間性を育み、社会に貢献する人材を育成することを教育方針としています。中でも学生や生徒に必ず伝える『この人生に何ものかの光を点ずる』という一文を大事にしています。この学校で頑張ればあなた達の人生に必ず光が灯るという意味です」
さらに、創立者の百瀬泰男氏が残した「如何なる教育方法も愛情に比べたら極めて低い値打ちしかない」という言葉も、今の時代だからこそ大切にしている。
百瀬理事長:「共働きや核家族が増えて家庭での団らんも少ない中で、子ども達は幸せな人生を歩んでいけるのか。だからこそ、我々が提唱し続けている一人ひとりの心に寄り添った『愛の教育』をこれからも推進していくのが、学生ファースト・生徒ファースト・園児ファーストの教育だと思うのです」
教職員が一体となりコロナ禍でも前向きに変化
フェリシアこども短期大学の附属図書館。新校舎建築を機に、システムを刷新し「ネオシリウス・クラウド」を採用。
さらに幼・高・大の連携が同学園の価値だと語る百瀬理事長。短大の授業では附属の幼稚園で園児達と共学する機会が多く、学生達は現場で必要な力を養うことができる。また、高校に新設された保育コースの生徒達と、隣接している保育園の園児達が交流を持ったり、高校で短大の授業を受けることができるなど学園の施設を有機的に活用し連携を図っている。
コロナ禍では短大で必修である保育実習の手配から運営までが厳しい状況だったという。
百瀬理事長:「しかしこうした状況も教職員が一体となり乗り越えました。高校は、授業を配信したり生徒に勉強法をレクチャーしたりと、デジタルが得意な教職員がリーダーシップを発揮し、学校全体が一体となって取り組みました。短大では、コロナ前からオンライン授業の環境を整えていたことが奏効し、コロナ禍では、対面と組み合わせた授業をいち早く実現することができました。昨年短大を卒業した学生の就職率は100%です。私はこうした教職員の、『学生たちを一人も取りこぼさない』という熱意が、建学の精神そのものだと改めて感じているのです」
顧客視点の学園経営で愛のある保育者を育てる
周囲の自然に調和する温かな木材基調の新校舎が完成(2019年9月:設計 隈研吾)、グローバル化に適した保育者を養成している。教職員と学生がなごやかに集う。
百瀬理事長:「“顧客視点”は学校教育の場にはなじまないかもしれませんが、教育理念に共感し、入学してくださっている点では、学生や保護者は顧客以外何ものでもありません。私達がすべきことは、価値のある教育と教員・職員の知識や技能を学生達に惜しむことなく提供すること。お客様だからおもてなしするというのではなく、この学校でよかったと将来的に満足してもらえることが教育者としての使命と考えています。一方で、学生・生徒達に満足してもらえる教育を担う、教職員が働く環境整備も大切にしています。本学では『女性労働者の平均勤続年数を現在の10.6年より1年以上伸ばす』という目標を立てました。その達成のために、昨年4月から初任給の引き上げなど若年層を特に手厚くした処遇改善を実施。現在は短時間勤務制度による柔軟な働き方を取り入れています。さらに活用しやすい年次有給休暇制度の構築を検討、取得の推進もする予定です」
同学園の214名の職員のうち女性は174名と約81%を占めている。女性のみならず男性職員の育児休暇を取得する実績も出始め、男女とも活躍できる働きやすい職場になっている。
現在の学園のビジョンは『次世代の人財育成』。人を宝物として育て、『愛の教育』を柱に、教育界の中心となって教育をリードする学校法人をめざす。
百瀬理事長:「今後は日本以外の文化的背景や第一言語を持つ人が、さらに多く日本で生活することが予想されます。グローバル化が進む教育現場ではすべての子どもの権利を保証するために、保育や教育を提供する側が多文化・異文化を受容し言語的な対応ができなくてはならないと考えています。社会の変化に合わせて、我々も変わっていかなければなりません。特に短大では、日本語のサポートもしながら多様な学生を受け入れ、多様な価値観と共存できる人財を養成していきます」
明泉学園は、確たる理念のもと独自のアイデンティティー構築を目指しさらに改革を進める。