株式会社 竜製作所 株式会社 竜製作所

トップインタビューの内容は「週刊新潮」2023年12月27日発刊新年特大号に掲載されたもので、情報はその時点のものです。

米国・台湾メーカーと提携し前進するAIロボティクス
専用機製造の高い技術力でイノベーションを起こす


日本の“モノづくり”を支える専用機の製造を主軸に、培った技術でロボット産業との関わりを深め経営の多角展開とイノベーションを目指す竜製作所。

株式会社 竜製作所 代表取締役社長 石田恭一郎
株式会社 竜製作所
代表取締役社長
石田恭一郎

 1953年(昭和28年)に愛知県名古屋市で創業した竜製作所は専用機メーカーの老舗だ。専用機とは特定の目的やタスクに特化して設計および製造された機械を指す。竜製作所は日本の“モノづくり”産業に欠かせない専用機を、開発・設計・製造し、自動車業界、半導体業界など様々な業界へ提供し続け、専用機メーカーとしては業界トップクラスの売上規模を誇る。
「弊社は、年商1000億円企業を目指すために、専用機の製造で培った技術やノウハウを活かし、いくつもの取り組みをはじめています。その3本柱といえるのが、①従来の専用機のメーカーとして技術のさらなる向上を図ること。②独自製品の開発を手がけ、市場に投入すること。 ③シリコンバレーのスタートアップ企業に投資しつつ、 OEM生産も行い、彼らベンチャー企業がアジアに進出する折りのゲートウェイ企業になることです」と語るのは同社の石田恭一郎代表取締役社長だ。

米国と台湾のメーカーと提携しロボットとの関わりを深める

人手不足を背景に、需要が拡大する業務用ロボット。AIによる自律移動性能の技術を持つメーカーと提携を結び、日本のニーズに合わせ新たなロボットを展開していく人手不足を背景に、需要が拡大する業務用ロボット。AIによる自律移動性能の技術を持つメーカーと提携を結び、日本のニーズに合わせ新たなロボットを展開していく。

 3つめの柱の一環として、今年さらに前進したのが、AIロボティクスの開発及びロボットベンチャー企業への積極投資である。
「これまでもロボットベンチャーと提携し、まつ毛のエクステンションを行うロボットや、倉庫内を自動で走行し荷物のピッキングを行うロボットなどの日本・アジア展開をサポートしてきましたが、今回はアメリカと台湾のロボットメーカーと提携し、当社が推し進めるイノベーションの取り組みに拍車を掛けようと思っています」と石田社長は説明する。
 米国のロボットメーカーとの提携で扱うのは、ロボットが自分の周囲の環境を理解し、地図を作成して自走する、マッピング技術を投入した作業ロボット。UV照射器を備え、病院などの施設内を紫外線を使って殺菌・消毒するというものだ。新型コロナウイルス感染症の、パンデミックの苦い経験があるだけに大きな需要が期待される

病原体、バクテリア、細菌をUVライトで消毒する自動走行型ロボット。米国のメーカーと提携し新しい展開を図る病原体、バクテリア、細菌をUVライトで消毒する自動走行型ロボット。米国のメーカーと提携し新しい展開を図る。

 石田社長は更に台湾のロボットメーカーとの提携に期待する。台湾のロボットメーカーで扱うものも、基本的にはマッピング技術を駆使した米国のメーカーと同じ機能をもつものの、ロボットが行う作業が多岐にわたる可能性を秘めているからだ。
石田社長:「台湾メーカーのロボットは床に接して自走する部分と、上部の作業を行う部分が分かれ、弊社には自走部分が提供されます。つまり、自走するロボットの上部をさまざまな場面で活躍できるロボットへとアレンジメントして製作し、日本で自由に展開出来るということなのです。だから、日本のニーズに合わせて、工場内で働く作業ロボットやレストランで働くサービスロボット、あるいは様々な施設内で殺菌・消毒して回る清掃ロボットでも、アイデア次第で、竜製作所の製品として展開できるということなのです。この台湾のロボットメーカーとの提携が、弊社がいままで培ってきた技術やノウハウを活かしながら、業容拡大を図る切っ掛けになる、興味深い案件と考えています」

 台湾のロボットメーカーとしても、汎用機ではなく、製品ごとにクリエイティブな設計を行い製作している専用機メーカーの竜製作所なら、日本のニーズをつかみアレンジメントした製品を開発し販売するだろうと期待したわけである。そうすれば提供する自走部分の需要も拡大する。

フロンを使わない空調機の製品化に目処が立つ

 独自製品の開発では、環境破壊に繋がるフロンを使わない空調機の実現にいよいよ目処が立ってきた。この電気消費量が約1/2に削減されるというエアコンの開発は岐阜県大垣市にある同社イノベーションセンターで行われている。現在のところ、吸い込み温度から吹き出し温度まで10度下がる段階に到達した。需要が見込めるのは大型商業施設などだ。また牛舎、豚舎もターゲットにしており、2024年の夏には豚舎に導入予定だ。
 同社は人材の採用やその育成に力を入れているが、そこには専用機製造の世界を知り抜いた石田社長の“モノづくり”に対する思いが反映されているようだ。

高いコミュニケーション能力を持つ人材を採用し育成

2024年10月に完成する大府新工場2024年10月に完成する大府新工場。クリーンな環境の組立工場面積は3.5倍となり、複数ラインの同時受注にも対応する。

石田社長:「私たちが目指す専用機の製造は、オーダーメイドでクリエイティブな仕事です。専用機はさまざまな専門工程を経て作り上げられます。弊社はこれまで培った技術力があるからこそ、機械単体やライン全体でも一括製作する事が出来るのです。更に弊社は、営業・設計・製造のすべての分野で高い技術力や技能、また構想を練り提案する力も求められます。ですから、お客様や協力会社との信頼関係を築く良好なコミュニケーション、あるいは技術者同士の血肉の通ったコミュニケーションを深めることでこそ、より良い“モノづくり”が可能になると思うのです」
 そのために、十分な時間を掛けて社長自らがコミュニケーション力の高い人材の採用を行い、じっくりと育成に力を入れ続けてきた。

 そういった石田社長の経営思想が注目され、大阪の摂南大学からは、2年連続で石田社長の外部講師としての登壇依頼があり、“モノづくり”の大切さについて学生たちに熱く語りかけたという。
 また、福利厚生については入社、結婚、子育て、介護など、社員のライフステージに合わせて、その時に必要とされる制度を実施しているが、2023年は、自宅から会社まで20㎞以上の長距離通勤者で高速道路を利用する社員に利用料金の支給制度をはじめた。
「これからも働きやすい会社に向けて環境を整え、顧客の課題を解決する、ニーズにマッチしたオーダーメイドの提案ができる社員と共にイノベーションを起こし、挑戦を続けて行く会社でありたい」と石田社長はビジョンを語る。


Profile Data

株式会社 竜製作所

本社:名古屋市南区豊田4-8-2
電話:052-691-2365
設立:1953年(昭和28年)
資本金:4,000万円
事業内容:自動組付機械、検査装置設計・製作、OEM生産事業、航空機部品製作、AIロボティクスなど
https://www.ryuuss.com/